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2022.05.23
バイオセラピーのご案内
はじめに
痛みを減らす新たな治療法「バイオセラピー」
バイオセラピーは、自己組織を活用する治療法で、『保存療法と手術の中間に位置する新しい選択肢』として注目され始めています。
当院で施行できるバイオセラピーについて
当院では以下のバイオセラピーを導入しています。
リンクをクリックすることで各バイオセラピーの説明部分にスクロールされます。
この記事の目次
PFC-FD™療法とは?
PFC-FD™療法のメリット
PFC-FD™療法のデメリット
PFC-FD™療法の流れ
PFC-FD™療法の治療後の注意点
PFC-FD™作製時の注意点
PFC-FD™療法の料金について
ヒト幹細胞培養上清液療法とは?
ヒト幹細胞培養上清液療法のメリット
ヒト幹細胞培養上清液療法のデメリット
ヒト幹細胞培養上清液治療の流れ
ヒト幹細胞培養上清液療法の治療後の注意点
ヒト幹細胞培養上清液療法の料金について
ご挨拶
バイオセラピーという言葉を耳にしたことはありますか?
これまでは治療が不可能であった疾患の治療やアンチエイジングの分野で注目され、様々な場面で耳にすることが増えてきているのではないかと思います。
バイオセラピー・再生医療と言っても多くの種類がありますが、その中心にあるのは幹細胞(Stem Cell)と呼ばれる『様々な細胞に分化して組織を修復する能力』を持っている細胞です。この細胞を使用した再生医療は費用が高額であったり、限られた施設でしか治療できなかったりと、いまだ万人に適応できる医療ではありません。
一方で、幹細胞やその他の細胞を直接使用しない再生医療もあります。今回、当院で導入する『PFC-FD™療法』と『ヒト幹細胞培養上清液療法』がそれにあたります。この治療法は幹細胞治療と比べて安価で使用できる施設を選ばないなどの理由から、現在多くの病院やクリニックで導入されています。
当院でも最新の治療を患者様に届けるために導入を決定しました。まだまだ当院で施行できるバイオセラピーには限りがありますが、今後も効果が期待できる治療法の検討や導入を継続していきたいと思っております。
バイオセラピーについて
バイオセラピーとはどのような治療ですか?
バイオセラピーとは成長因子の作用を利用して自身の持つ回復能力を高め、組織の再生を促す治療法です。成長因子には様々な種類があります。
種類 | 主な効果 |
---|---|
血小板由来成長因子(PDGF) | 細胞分裂の促進、損傷組織の増殖・再生 |
トランスフォーミング成長因子(TGF) | 抗炎症、創傷治癒や細胞の増殖促進 |
幹細胞増殖因子(HGF) | 組織の再生・活性 |
血管内皮細胞増殖因子(VEGF) | 血管の新生、抗炎症作用の増幅 |
上皮成長因子(EGF) | シミ、くすみ改善、表皮代謝改善、シワ改善 |
ケラチノサイト成長因子(KGF) | 発毛、育毛効果 |
インスリン様成長因子 | 皮膚再生、シワの改善、ハリや弾力の再生 |
上記の表以外にも多くの成長因子がありますが、これらの成長因子を直接損傷部位に注射したり、点滴したりすることによって治療を行います。
バイオセラピーの効果として期待できるのは『抗炎症作用』と『組織修復作用』です。『抗炎症作用』とは炎症を改善させる作用のことで、痛みや腫れを抑える効果が期待できます。『組織修復作用』とは壊れてしまった組織を再生・修復する作用のことで、捻挫などで傷んでしまった足首の靭帯や投球障害によって傷んだ肘の靭帯の再生。修復を促し、治療期間の短縮につながる効果が期待できます。
※ 組織修復作用は組織が壊れてからの時間が短いもの、壊れた量が少ないものほど効果を発揮します。
※ 加齢による変形(O脚やX脚など)を元に戻したり、すり減った軟骨を再生させたりすることはできません。
バイオセラピーが適応になる病気・ケガは?
整形外科領域でバイオセラピーの効果が期待できる病気やケガには以下が挙げられます。
整形外科疾患 | 例 |
---|---|
変形性関節症 | 変形性膝関節症 |
靱帯損傷 | 足関節捻挫、投球障害 |
腱付着部炎 | テニス肘 |
筋・筋膜損傷 | 肉離れ |
神経障害 | 腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症 |
基本的には通常の治療をしても効果が得られないときが適応となりますが、スポーツ障害などで早期復帰を希望される場合は早い段階で導入することも可能です。
また、手術を勧められたけどなるべく手術はしたくない方など、侵襲的な治療を行う前の最後の選択肢として考えてみても良いかもしれません。しかし、バイオセラピーは手術に換わる治療ではないため、早く手術しないといけない場合の方は適応から外れます。治療機会を逃すことがないように注意が必要ですので、担当医によくご相談ください。
バイオセラピーのデメリットは?
バイオセラピーにもデメリットがあります。そのため、よく説明を受けて十分にご理解されてから治療を開始する必要があります。
代表的なデメリットは以下の通りです。
① 治療は自由診療で行われる
バイオセラピーは現在のところ保険適応ではありません。通常の医療保険が使用できないため、治療費は全額自己負担になります。バイオセラピーの治療費は種類、内容によって大きく異なります。当院で導入しているバイオセラピーも決して安価なものではありません。
② 効果に個人差が出やすい
治療効果は自己修復力に依存するため、個人によって修復プロセスが上手に働かない場合があります。自己の細胞を使用して成長因子を抽出した場合は、個人によって完成した製剤に含まれる成長因子の量や質が異なるため、効果も変わってくる可能性があります。
③ 未発見の副作用
現在のところ、ほとんど副作用の報告がありませんが、新しい治療法のため現時点で明らかになっていない副作用が今後明らかになる可能性があります。
④ 注射部の症状
注射を行った部分に一時的な痛みや腫れが出る可能性があります。
上記以外にも施行するバイオセラピーの種類によって特有のデメリットがありますので、それぞれの項目をご参照ください。
PFC-FD™(Platelet-Derived Factor Concentrate Freeze Dry)療法
PFC-FD™(Platelet-Derived Factor Concentrate Freeze Dry)療法とは?
患者様ご自身の血小板由来の成長因子を用いた治療法になります。
この治療法はプロゴルファーのタイガー・ウッズ選手やメジャーリーガーの大谷翔平選手がケガの改善に活用して話題になった多血小板血漿(PRP:Platelet-Rich Plasma)療法の応用になります。PFC-FD™はPRPから成長因子を取り出して凍結乾燥(フリーズドライ)したものになります。
PFC-FD™療法のメリット
① 安全性が高い
PFC-FD™療法は患者様ご自身の血液から製造されるため、他人の組織を使った治療に比べると拒否反応や感染症のリスク、副作用が少ない治療になります。
② 何度でも受けることが出来る
この治療には回数制限がないため、何度でもこの治療を選択する事が出来ます。
PFC-FD™療法のデメリット
① 効果に個人差がある
製剤に含まれる成長因子の量や質に個人差が出てきます。この個人差が治療効果に影響する可能性があります。
② PFC-FD™を製造できない場合がある
B型肝炎、C型肝炎、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)、梅毒、ヒトT細胞白血病に罹患されている方はPFC-FD™の製造が出来ません。初回採血時にウイルス検査を行い、陽性となった場合は治療を受けることが出来ません。加えて、血小板の機能が低下する疾患に罹患中の方やがん治療中の方、妊娠・授乳中の方も適応外となるため治療を受けることが出来ません。
PFC-FD™療法の流れ
PFC-FD™療法の流れは以下の通りになります。
初診日に診察、説明を行い、同意を得られたら採血(約50ml)を行います。
採血した血液を提携しているセルソース株式会社へ輸送し、PFC-FD™を作製します。この時に感染症の検査を同時に行い、陽性だった場合は製品の作製が出来ません。陽性だった場合は採血・感染症検査費用(12,100円)は患者様ご自身の負担となります。
製品が出来上がりましたら外来で患部へ注射します。1回の採血で6mlのPFC-FD™が作製されるため、注射回数は1回~6回まで自由に選択できます。PFC-FD™は凍結乾燥製品のため外来で6ヵ月保存できます。そのため、治療日も6ヵ月以内に自由に選択が可能です。
PFC-FD™療法の治療後の注意点
入浴について
注射部位へのシャワーは注射から6時間後であれば可能です。湯につかる場合は翌日以降でお願いします。ただし、注射時に太い針を使用した場合は翌日まで患部を濡らさないようにしてください。
運動について
注射当日の運動はお控えください。運動を行う場合は翌日以降にお願いします。
痛みや腫れについて
注入後数日は治療に伴う痛みが強くなったり、腫れが出たりすることがありますが、治療効果に差は生じません。
治療によって生じた痛みや腫れの診療や投薬には医療保険を適用できません。すべて全額自己負担となります。
PFC-FD™作製時の注意点
① 作製できない場合があります
体調がよくない場合や血液の状態によってはごく稀に作製できない場合があります。その際には再度採血をお願いする場合があります。
② 血液輸送時の破損
血液輸送時に破損した場合は再度採血を行う必要があります。
③ 保存期間を過ぎた場合
保存期間である6ヵ月を過ぎた場合は作製した製剤を破棄させていただきます。
PFC-FD™療法の料金について
注射箇所 | 料金 |
---|---|
局所注射 | 166,650円~ |
関節注射 | 168,300円~ |
容量、用法、治療回数によって料金が変わります。
更に詳しく知りたい方はこちらのサイトを御覧ください。
関節治療オンライン「PFC-FD™療法(血液由来の成長因子を用いたバイオセラピー)とは」
ヒト幹細胞培養上清液療法
ヒト幹細胞培養上清液療法とは?
ヒト幹細胞培養上清液とは、ヒト幹細胞を培養した際の上澄み液のことです。この上澄み液の中には多量の成長因子が含まれています。この成長因子の作用を利用した治療のことをヒト幹細胞培養上清液療法といいます。
当院では脂肪幹細胞培養上清液を使用します。
ヒト幹細胞培養上清液療法のメリット
① 安全性が比較的高い
ヒト幹細胞培養上清液は他人の細胞を用いて製造されたものになります。ただ、幹細胞を培養する際には厳密な感染症検査をクリアする必要があり、加えて、上清液から細胞を取り除く処置が施されているため、拒否反応やガン化のリスクはほとんどありません。現時点で重篤な副作用の報告はなく、比較的安全性の高い治療といえます。
② 成長因子の質、量が安定している
世界標準のヒト幹細胞培養上清液を使用するため、成長因子の量や質にばらつきがなく、安定した治療効果が期待できます。
③ その日から治療が開始できる
自身から細胞を採取する必要がないため、事前の準備なく治療を開始することができます。
④ 1ml単位で選択できる
ヒト幹細胞培養上清液を1ml単位で容量を選択する事が出来るため、予算に応じて治療を行うことが出来ます。
ヒト幹細胞培養上清液療法のデメリット
① 未知のウイルスなどによる感染を否定することができない
② 治療後は献血をすることができない
ヒト幹細胞培養上清液治療の流れ
ヒト幹細胞培養上清液療法の流れは以下の通りになります。
ヒト幹細胞培養上清液療法の治療後の注意点
入浴について
注射部位へのシャワーは注射から6時間後であれば可能です。湯につかる場合は翌日以降でお願いします。ただし、注射時に太い針を使用した場合は翌日まで患部を濡らさないようにしてください。
運動について
注射当日の運動はお控えください。運動を行う場合は翌日以降にお願いします。
痛みや腫れについて
注入後数日は治療に伴う痛みが強くなったり、腫れが出たりすることがありますが、治療効果に差は生じません。
治療によって生じた痛みや腫れの診療や投薬には医療保険を適用できません。すべて全額自己負担となります。
ヒト幹細胞培養上清液療法の料金について
注射箇所 | 料金 |
---|---|
局所注射 | 18,150円~ |
関節注射 | 19,800円~ |
点滴注射 | 22,000円~ |
容量、用法、治療回数によって料金が変わります。
更に詳しく知りたい方はこちらのサイトを御覧ください。
日本再生医療臨床学会「幹細胞培養上清液とは」