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脊 椎 2025.08.22

【せぼねの教室】第4回 手のしびれは首?それとも手首?原因の切り分けガイド。

手のしびれは首? それとも手首? 原因の切り分けガイド。

「手がしびれる=首の病気?」と思いがちですが、原因は首(頚椎)だけではありません。手首の「手根管症候群」や肘の「尺骨神経障害」など、末梢神経のトラブルでも手のしびれは起こります。本稿では、どの指がしびれるか・どんな動作で悪化するかを手がかりに、頚椎(神経根症/脊髄症)と末梢神経障害をわかりやすく切り分け、受診の目安と検査、治療(保存療法~手術・リハビリ)まで解説します。

 


監修 : 脊椎外科専門医 塩川 晃章(しおかわ てるあき) / 南川整形外科病院 | 福岡・整形外科・脊椎外科

Three key points

まず知っておきたい3つのポイント

■ 「どの指がしびれるか」で原因の手がかりに : 親指~中指中心→手根管症候群、薬指~小指中心→尺骨神経障害の可能性。
■ 首が原因なら、首や肩~腕にかけての痛み・しびれ(神経根症)や、「手が不器用」「箸が使いにくい」「歩行がふらつく」(脊髄症)を伴うことがあります。
■ 夜間増悪・手を振ると楽→手根管症候群の典型。肘を曲げると悪化→肘部管症候群の典型。

自分自身を理解するためのヒント

どの指がしびれる? | 分布でみる原因のヒント

■ 親指~人差し指~中指(+薬指の親指側) : 手根管症候群(正中神経)を疑う。
■ 薬指~小指 : 尺骨神経障害(肘部管症候群/ギヨン管症候群)を疑う。
■ 手の甲のしびれ・感覚低下 : 橈骨神経の障害を疑うことも。
■ 頚椎由来(神経根症) : 首の動きや姿勢で症状が変わる、肩~腕~手に放散痛。

「要注意」サイン | 頚髄症を見逃さない

■ ボタンがかけにくい、箸・ペンが使いづらい(手の巧緻運動低下)。
■ 足がもつれる・階段が怖い(歩行障害・ふらつき)。
■ 排尿・排便の異常、会陰部のしびれ。
■ これらがある場合は、早めに整形外科(脊椎外科)へご相談ください。

 

動作で悪化する? | 誘発サイン

■ 手根管症候群 : 夜間・明け方に悪化、手を振ると軽くなる/手首を曲げた姿勢(スマホ・自転車)で増悪。
■ 肘部管症候群 : 肘を深く曲げる・長時間の肘つきで増悪。
■ 頚椎神経根症 : 首を反らす・横に倒す(スパーリング)で腕のしびれが増すことがある。

 

診断の流れ | 問診→診察→検査

■ 神経学的診察 : 感覚の分布、筋力(母指球・骨間筋等)、反射の確認。
■ 誘発テスト : ファーレン/ティネル徴候、スパーリングなど。
■ 画像検査 : X線(配列・すべり)、MRI(頚椎の神経圧迫評価)。
■ 超音波(エコー) : 手根管・肘部の神経絞扼の評価に役立つことがあります。

 

治療の選択肢 | 保存療法→注射→手術を段階的に

保存療法 :
■ 生活指導 : 手首は「真っすぐ」を基本に。肘は長時間深く曲げない。スマホ・キーボード姿勢を見直す。
■ 装具 : 手根管症候群は夜間手関節固定スプリント、肘部管症候群は肘伸展位スプリントを就寝時に。
■ 薬物療法 : 痛み止め・神経痛の薬。リハビリ : 姿勢改善、頚椎~肩甲帯の安定化。

 

注射療法 :
■ 手根管内ステロイド注射(症状やタイミングに応じて)。
■ 頚椎神経根症に対するブロック注射(必要に応じて)。

 

手術療法 :
■ 手根管開放術・肘部管開放術など : しびれの持続・筋萎縮・伝導ブロックが強い場合に検討。
■ 頚椎の手術(例 : 前方除圧固定、椎弓形成など)は、症状・画像・全身状態を総合して判断します。

 

※頚椎で手術が必要と判断されるケースでは、当院での治療または連携施設へのご紹介を含め、最適な選択肢をご提案します。
 

リハビリ&日常ケア | しびれを悪化させないコツ

■ キーボードは肘90度・手首まっすぐ、マウスは手首ではなく腕全体で操作。
■ スマホは目線を上げて見る(首を深く曲げない)。
■ 寝る時は適切な姿勢で神経の休息を確保。
■ 頚椎~肩甲帯のストレッチと、肩甲骨まわりの安定化トレーニングを段階的に。

 

リハビリも含めて最適な道筋をご提案します。

塩川先生のひとこと

「手のどの指がしびれるか」「どんな時に悪化するか」を教えてください。原因に合わせた検査・治療を一緒に選び、必要ならリハビリも含めて最適な道筋をご提案します。

【プロフィール】
脊椎外科専門医 塩川 晃章(しおかわ てるあき)

「首・腰の痛み、手足のしびれに対する専門治療を担当。丁寧な問診と画像診断を組み合わせ、負担の少ない治療から手術までをわかりやすく提案します。」

対応手術 : 椎弓形成(切除)、TLIF/PLIF、BKP、腰椎椎間板ヘルニア摘出ほか。

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