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2021.07.08
【南川コラム】後十字靭帯損傷の原因と治療法
膝関節の安定化を担っている後十字靱帯はスポーツや交通事故などで損傷する事が多く、部分的にあるいは完全に損傷を起こしてしまう事があります。受傷すると完治までに時間がかかるといわれています。今回は、その後十字靭帯損傷の原因や治療について解説します。
後十字靭帯とは?
後十字靭帯は大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)の中心部を前十字靭帯とともに繋いでいる膝関節内の靭帯です。前十字靭帯と十字のかたちに交差して膝関節を支えています。
膝関節をひねる動作を支えたり、脛骨が後ろにずれないように支える働きを担っています。
後十字靭帯損傷はどうして起こるの?
膝(脛骨上端)の後方に向かう外力で後十字靭帯が損傷します。非常に強大な外力を受けると複数の靭帯に損傷が及ぶこともあります。
以下の受傷機転で損傷を受けることが多いです。
✔︎交通事故
ダッシュボード損傷とも言われ、車が急停車しダッシュボードに膝(脛骨の上端部)をぶつけることによって起こります。
✔︎コンタクトスポーツ(ラグビーなど)
膝下にタックルを受けることで後十字靭帯が損傷を受けることがあります。
✔︎転倒
膝を90°曲げた状態で転倒すると脛骨が後方に押し込まれるため受傷します。
どんな症状が出るの?
急性期(受傷後3週間くらい)には膝の痛みと可動域制限がみられます。それに伴って腫れ(関節内血腫)が目立ってくることもあります。
急性期を過ぎると痛み、腫れ、可動域制限はいずれも減少してきます。
この時期になると膝の不安定感が徐々に目立ってくることがあります。
下り坂やひねり動作、階段昇降の際に膝の不安定感が顕著に出現することが多いです。
治療法は?
保存療法
損傷の程度や患者様の生活背景によって治療法は異なります。
腫脹管理を目的として、包帯での圧迫や挙上、冷却、安静を行います。
疼痛管理を目的として、サポーター装着し、関節安定性を図ります。
筋強化
早期から積極的に曲げ伸ばしの訓練や大腿四頭筋トレーニングを行います。脛骨の後方へのズレを防ぐために大腿四頭筋は特に重要な筋肉ですので、トレーニングの継続が必要となります。
手術療法
前述の保存的治療では充分な安定性が得られなかった場合、もしくはトップアスリートが後十字靭帯を損傷した場合などは手術療法が選択されることがあります。後十字靭帯損傷に対する手術は「後十字靭帯再建術」が挙げられます。
【後十字靭帯再建術】
損傷・断裂した靭帯に、身体の別部位の腱を移植して再建する方法です。移植する腱は採取しても支障が出にくい膝のハムストリングの一部(半腱様筋腱と薄筋腱)や、膝蓋腱(膝の皿の周辺の腱)の一部などを使用することが多いです。
再建手術は関節鏡という関節用の内視鏡を用いて行います。一般的には小さな傷で、大手術ではありません。
Q&A (よくある質問)
手術以外の方法で治す方法はありますか?
損傷程度にもよりますが、後十字靭帯損傷では第一選択として保存治療が選ばれる事が多いです。サポーターで膝関節を固定し、大腿四頭筋の筋力強化などの保存治療を行います
損傷後はスポーツへ復帰できますか?
保存治療や手術治療を行い、膝の安定性を獲得できたら復帰可能です。復帰の基準として9ヶ月から12ヶ月を要します。
損傷時の特徴的な症状は何ですか?
損傷してすぐは膝の痛みと関節の動かしにくさが現れます。徐々に膝が腫れ、血が溜まる場合もあります。膝が抜けるような感覚や力が入りにくい感覚を覚えます。
コラム監修
【記事監修】市村竜治 医師
【専門】膝関節外科・人工関節・外傷
【資格】
日本整形外科学会 専門医
日本人工関節学会 認定医
日本DMAT医師